「5G(第5世代移動通信システム)」とは?5Gの世界で実現できること

 

更新日:2021/3/31

「5G(第5世代移動通信システム)」とは?5Gの世界で実現できること
「5G(第5世代移動通信システム)」とは?5Gの世界で実現できること

最近、テレビCMやニュースなどで目にすることも多くなった「5G」という言葉。5Gとは新しい通信規格のことで、現在一般的に使用されている「4G」の進化版にあたります。

 

5Gについて詳しく知らなくても、なんとなく「通信速度が上がる」といった印象を抱いている方は多いのではないでしょうか。

 

5Gに移行すれば通信速度は大幅に向上しますが、5Gの世界で実現できることはそれだけではありません。今回は、5Gの基礎知識やメリット・デメリット、またこれまでの通信規格の歴史について解説していきます。

「5G」とは何か

「5G」とは何か
「5G」とは何か

まずは、5Gの基礎知識についてご紹介します。

 

 

5Gの「G」って何のこと?

 

Gは「Generation(世代)」の頭文字、5は「5th(5番目の)」という意味で、5Gは「第5世代の移動通信規格」を指します。

 

現在主流の通信規格は、スマートフォン画面右上にも表示される「4G(第4世代通信規格)」。5Gは、4Gの次世代にあたる通信規格です。

 

ちなみに、少し前によく聞かれた「LTE(Long Term Evolution)」も通信規格の一つ。3Gの後に登場し、4Gの技術を先取りしたものであったことから、「3.9G」と位置づけられています。

 

ただし、LTEは4Gに限りなく近い技術を備えていたため、LTEを4Gに含めて呼称されています。

 

 

4Gとは、何が違うの?

 

通信速度など細かな違いはたくさんありますが、4Gと5Gの最も大きな違いは、想定される活用シーンの広さです。

 

4Gが主流となり初めたのは2010年代の前半。スマートフォンの普及に伴って通信の高速化・大容量化が求められたことが、4G移行への理由とされています。

 

つまり4Gは、「スマートフォンのために作られた通信規格」ということができるでしょう。

 

それに対して5Gは、「高速かつ大容量の通信」「遅延の少ない通信」「多数同時接続ができる通信」を目標に開発されている通信規格です。

 

ただスマートフォンでゲームや動画を楽しむだけでなく、近年注目されているIoT(あらゆるモノがインターネットとつながって情報交換する仕組み)などを含めて、開発段階からあらゆる活用シーンが想定されています。

 

5Gは、「社会全体のあらゆる端末やアプリケーションを活用するために作られた通信規格」といえるのです。

通信速度は約10年ごとに高速化している?通信規格の歴史

通信速度は約10年ごとに高速化している?通信規格の歴史
通信速度は約10年ごとに高速化している?通信規格の歴史

現在は「4Gから5Gへ」が話題となっていますが、4Gへ至るまでにもあらゆる進歩の軌跡がありました。ここでは、これまでの通信規格の進化の歴史を紐解いていきたいと思います。

 

 

1980年代~1990年代:1~2G

 

1G

 

最初の通信規格として生まれたのが、「アナログ無線技術のモバイルネットワーク」である1G。80年代から90年代にかけて発売されていたアナログ携帯電話に使用されていた技術です。

 

携帯電話としての機能は通話のみでしたが、当時は画期的な発明でした。

 

 

2G

 

90年代に入ると、徐々にデジタル無線技術を用いたモバイルネットワークが主流となりました。これが2Gにあたります。

 

アナログからデジタルへ移行したことでデータ通信サービスが提供しやすくなり、メールやインターネットなどを携帯電話で使えるようになりました。

 

 

2000年代:3G

 

2Gがスタンダードになり、メールやインターネットが使えるようになると、次は通信の高速化が求められました。ここで技術開発が重ねられ、2000年代に入って主流となったのが3Gです。

 

3Gは開発当初、最大データ速度を2Mbpsに定めて開発され、後期には10M~20Mbpsクラスの高速化技術が実用化。通信の高速化が追求されるようになったのはこの時期から、といっても過言ではありません。

 

また、1~2G時代は地域ごとに異なる技術でサービスが提供され始めたため、今のように「1台の携帯電話が世界中どこでも使える」というわけにはいきませんでした。

 

しかし3Gの開発が進められる中で、国際連合の専門機関「ITU(国際電気通信連合)」がIMT-2000として第3世代携帯電話の規格を世界標準に定めます。これによって、世界中どこにいても同じ携帯電話を使えることを目指しました。

 

 

2010年代:4G

 

スマートフォンが普及し始めると、さらに通信の高速化や大容量化が求められるようになりました。そこで先進技術を先取りして開発されたのがLTEです。

 

LTEは4Gへの活用を見越した技術として開発され、その頭文字を取って「LTE」と名付けられました。

 

LTEは、正確には4Gに近い技術であることから「3.9G」という位置づけですが、ITUが「3.9Gを使用したサービスにも4Gという名称を使うことを認める」といった内容を含むプレスリリースを発表しており、一般的に4Gとして扱われることがほとんどです。

 

 

2020年代:5G

 

今注目の通信規格であり、「高速」「大容量」「低遅延」「同時多接続」といった特長は4Gから大きな進化を遂げています。

 

先に触れたように、4Gがスマートフォンの普及に伴って開発された通信規格といえるのに対し、5Gはより大きな社会的規模での活用を考えて開発されている通信規格です。

 

5Gへの移行によって今ある情報技術が進化するのはもちろん、新しい技術・サービス・ビジネスの展開にもつながることは想像に難くありません。

 

スマートフォンにおける5Gのサービス提供は、大手携帯電話会社3社により一部地域で始まっています。スマートフォンで5G通信を使うことが当たり前になる時期も、そう遠くないでしょう。

5Gで何が変わる?どんなことができるの?

5Gで何が変わる?どんなことができるの?
5Gで何が変わる?どんなことができるの?

ここまで5Gの基礎知識や通信規格の歴史についてご紹介しましたが、「5Gに変わることで、結局何がどうなるのか」が気になりますよね?

 

そこで、以下では5Gの特徴について解説していきます。

 

 

5Gによって何が変わるの?

 

高画質の動画が手軽に楽しめる

 

現在、「YouTube」「Hulu」「Netflix」などの動画を楽しむ方が増えています。5Gになると今までよりも速く、大容量の通信ができるようになるので、4Gでは難しかった4Kや8Kといった高画質の映像配信や臨場感のある3D映像のストリーミングサービスなどを手軽に楽しめます。

 

 

人が多い場所でも快適な通信が可能

 

4G通信には「同時接続数が1平方キロメートルあたり10万デバイスまで」という条件があるため、混雑している場所などでは通信しにくい状況がしばしば発生します。

 

「フェスなどのイベント会場などでスマートフォンを使おうとしたとき、なかなかインターネットにつながらなかった」という経験をしたことがある方も多いでしょう。

 

5G通信では同時接続可能デバイスが4Gの10倍にあたる100万デバイスまでとされているため、人が多い場所でも快適に通信ができるようになります。

 

 

より正確で安全な自動運転が実現できる

 

自動運転では、アクセル・ブレーキ・ハンドルの操作が少し遅れただけでも大事故に繋がってしまうおそれがあります。

 

そこでネックになるのが、通信遅延。運転制御システムから情報が送られる際、通信遅延が生じると、「ブレーキを踏む」「ハンドルを切る」といった操作が遅れてしまうことが懸念されます。

 

5Gに移行し、通信遅延が少なくなれば、より正確で安全な自動運転が実現可能になるでしょう。

 

 

医療現場の発展にも

 

現代医療では、ロボットを使った遠隔手術(東京にいる医師が地方にいる患者の手術をするなど)の研究も進められています。

 

今後の5G普及に備えて、すでに国内には手術支援ロボットが350台以上も用意されているのだとか。

 

そんな遠隔手術も自動運転同様、ほんの少しの通信遅延が大きなリスクに繋がりかねません。5Gによって通信遅延の懸念がなくなれば、医療技術の精度向上によって助かる命も増えることでしょう。

「sub6(サブシックス)」と「ミリ波」

 

「sub6(サブシックス)」や「ミリ波」って何?

 

 

徐々に5G対応のスマートフォンが増えてきましたが、その説明において「sub6」や「ミリ波」というワードを見かけたことがあるかもしれません。

 

スマートフォンは基地局と呼ばれる全国各地に設置されているアンテナから発せられる電波を受信することで、インターネットなどのデータ通信をすることができます。

 

「sub6(サブシックス)」と「ミリ波」はともに5Gの中の周波数帯を指す言葉で、3.6GHz~6GHzの帯域を「sub6帯」、30GHz(日本では27GHz)~300GHzの帯域を「ミリ波帯」と言います。

 

基本的にデータ通信は、周波数が高ければ高いほどスムーズに行うことができます。「大容量の動画でもストレスなく快適に観られる」と言われる5Gですが、こうしたことが可能になったのは「高い周波数帯を使えるようになったこと」が大きな要因です。

「sub6(サブシックス)」や「ミリ波」って何?
「sub6(サブシックス)」や「ミリ波」って何?

4Gでは3.6GHz未満の周波数帯しか利用できませんでしたが、それと比べて5Gでは周波数帯が高くなっていることがおわかりいただけるでしょう。

 

 

「いまいちイメージがつかめない」という方は、周波数帯を道路に、データ通信量を車に置き換えて考えてみましょう。周波数帯の数字が大きくなればなるほど、道路の車線が増えていきます。

 

道路の車線が少ない(周波数帯の数字が小さい)場合、車は少ししか通れません(通信量は少なくなる)。しかし、道幅が2車線、3車線、4車線と広くなる(周波数帯の数字が大きくなる)につれて、一度により多くの車が通れる(より多くのデータ通信ができる)ようになります。

 

4Gよりも5Gの周波数帯(sub6とミリ波)のほうがたくさんのデータを通信できるので、超高速通信や超低遅延、多数同時接続といった高度な情報通信が可能になるのです。

 

 

sub6とミリ波、2つの周波数帯を使う理由

 

 

「なぜ5Gにはsub6とミリ波の2つの周波数帯があるの?」と不思議に思われる方もいるでしょう。理由は、それぞれのデメリットを補い合うためです。

 

周波数帯の高い「ミリ波」は高速で大容量の通信が可能ですが、電波の届く範囲が狭いことや障害物の影響を受けやすいことが難点です。

 

一方の「sub6」は、通信速度などに関してはミリ波に及ばないものの、電波が広域まで届くことや障害物の影響を受けにくいことが特徴。全国への普及が比較的早いとされているのもメリットと言えるでしょう。

 

このような特徴を持つ2つの周波数帯を使い、互いのメリットを生かしてデメリットを補い合うことで、快適な5G通信が実現しているのです。

 

「ミリ波」はまだ普及していないので現在発売されている5G対応のスマートフォンには、「ミリ波」にあえて対応していない端末もあり、「sub6のみ対応」と「sub6とミリ波どちらも対応」のものがあります。購入の際はしっかりと確認しておきましょう。

5Gはいつから使えるようになる?

 

そんな5Gですが、いつから使えるようになるのか、気になっている方も多いでしょう。実は、5Gはすでに運用され始めており、医療現場、自動運転、エンターテインメントなどのジャンルで本格導入のための研究が進められています。

 

またスマートフォンにおいても、大手携帯電話会社ではすでにサービスが提供されています。5G対応のスマートフォンを購入し、専用のプランに加入すれば利用が可能です。

5Gにデメリットはある?

5Gにデメリットはある?
5Gにデメリットはある?

5Gは非常に優れた通信技術です。しかし、そこにはデメリットがあるのも事実。そこで、ここでは身近に感じられる5Gのデメリットについても知っておきましょう。

 

 

5Gのデメリット

 

5Gに対応した機器が必要

 

5Gが始まったからといって、今ある機器でそのまま5Gを使えるわけではありません。通信規格に対応した機器の用意が必要です。

 

スマートフォンで5G通信を使いたい場合は、対応しているスマートフォンへの変更が必要になるなど、ある程度の費用がかかってしまいます。

 

以下は、2020年11月時点で発売されている5G対応スマートフォンの一部です。

・iPhone 12 Pro Max

・iPhone 12 Pro

・iPhone 12 mini

・iPhone 12

・Xperia 5 Ⅱ

・Galaxy Note20 Ultra 5G

・Galaxy A51 5G

・Google Pixel 5

・AQUOS R5G

・ZenFone 7

対応エリアが限られる

 

5Gの提供が開始されてはいるものの、今のところ5G通信に対応しているのは一部スポットのみとなっています。今後はエリアの拡大が予定されていますが、当分の間、5G通信を自由に楽しめる場所は限られてしまうでしょう。

 

また、5Gには「屋内へ電波が届きにくい」という性質があるため、サービス提供のエリア内であっても5G通信が利用できない可能性がある点にも注意が必要です。

 

大手携帯電話会社の対応エリアを見ると、2020年11月現在で5G対応エリアになっているのは東京や一部地方の都市部に限られています。

 

しかし、2020年冬以降にかけて対応地域の拡大がすでに予定されており、順次拡大される見込みです。まだ5Gの真価が発揮できる状況ではないという地域も多いですが、今後の地域拡大に期待しましょう。

 

ドコモの5G対応地域をみる >

ソフトバンクの5G対応地域をみる >

auの5G対応地域をみる >

5Gでできることが増える!今後に期待!

 

徐々に広まりつつある5Gは、これからの通信の在り方はもちろん社会全体をも大きく変えることになるでしょう。技術の進歩や新たな技術の開発によって、今の暮らしがより便利で豊かなものになるはずです。またスマートフォンにおいても、より快適な通信が可能になり楽しい活用方法も増えることが予想されます。

 

現在は総務省が大手携帯電話会社に対して「MVNOにも5G通信を提供すること」を要請しているため、携帯電話会社各社の今後の対応に注目しておきましょう。

 

 

※当ページの情報は2021年3月時点のものです。

関連記事